天涯孤独のぬくもり
少し前に天涯孤独の40代男性と会った。
弟は自ら命を絶ち、その後両親を病気で亡くし、奥さんもいない。今は一人で暮らしているのだそうだ。
「天涯孤独」といっても、悲壮感が漂っているわけではない。リズミカルで小気味好い会話のキャッチボールをしてくれる人。
その人は40代でありながら「俺、まだチヤホヤされたいと思ってるんだよね」と言っていたのが印象的だった。かっこ悪いことをあっけらかんと言い切った様がかっこよかった。
その人が以前、沖縄へ旅に出たとき
「Coccoみたいな女の子と会ったんだよ」
世界中を旅しながら仕事をしている女性だそうだ。
「沖縄にはさ、友達がいて。彼女はその友達の友達だったの。で、満天の星空の下、とうきび畑で3人で寝っ転がってたんだよね。そう、いかにも、沖縄っぽいでしょ。で、その彼女がさ、いきなり俺に抱きついてきて。びっくりしてたら、その彼女に『この温もりをちゃんと大事にして行こうね』って言われたの。東京にいるときにそんなこと言われたらきっと、むず痒くなっていたと思う。なんて、恥ずかしいこと言うんだって。でもなんかそのときはね、上空には星が数え切れないほどあって、夜風が気持ちよくて。ああ、本当にそうだな、そうありたいな、って思ったんだよね。」
その「Coccoみたいな女の子」が言った「この温もり」を私は感じたことがあるのだろうか。
私が住むアパートに、これから好きになる人のマンションに、例えば渋谷のラブホテルに「この温もり」はあるのだろうか。
いいな、感じてみたいなと思う。
でも、ずっと昔から持っているような気もしている。